ミャンマー通信「ミンガラバー」 第4号

ミンガラバー!!
こんにちは院長の原田です。

秋も押し迫ってまいりました。日本はだんだん冷えてきましたが、かの地ミャンマーでは、相変わらず熱帯エリアで、乾季ではありますが、日中は30度を超える毎日です。

今号では11月8日から13日までの訪緬の話題を中心に報告いたします。前号で指摘したANA813便ですが、今回は時刻通りに離陸しました。余談ですが、一般に離陸が遅延する場合、航空会社はお詫びと称して1000円の食事券を振舞うのですが、今回はその恩恵にはあずかれませんでした。(笑)

さて、今回の訪緬の目的は大きく分けて3つあり、(1)ヤンゴン医科大学教授が主宰するASCoN(※1)の招待講演での発表を埼玉医科大学国際医療センター高橋教授とともに行う事、(2)ヤンゴン総合病院リハビリ病棟での見学実習、(3)12月に開催するフォーラム(※2)の下準備といった内容です。
順番に披露致します。


(1)国際学会発表
11月8日からの3日間にわたって行われたこの学会は今年で17回目となり、およそASEAN諸国に相当する19か国が参加して毎年開かれております。リハビリにかかわる事業を展開する上で、このようなアジア諸国のリハビリの現況を知っておくことは非常に重要です。使用言語は英語で、3日間とも大変よくオーガナイズされた運営でした。



原田は本年度より弊院に導入された、ロボット支援歩行リハビリの目的で開発された「WelWalk」(※3)を用いたリハビリに関するパイロットスタディ(※4)の結果をビデオも交えた発表を行いました。


本機器は他のアセアン諸国には使用実績がなく、聴衆は興味深そうに聞き入っておりました。高橋教授は装具に関する内容で、この演題にもフロアからも含め(※5)大変な反響でした。


9,10両日のナイトセッションイベントでは、9日がヤンゴン川を船で約2時間にわたって上り下るクルージング、


10日は食事を交え各国代表によるパフォーマンスの披露でした。クルージングは演出が効いていて、アバのダンシングクイーン(※6)のリズムに乗って女性医師・オーガナイザーたちが踊っていたのが印象的でした。問題は10日のほうで、いきなりのフリでまず一同狼狽しましたが、いったいどんなパフォーマンスならば、受けとアピールと日本らしさを表現できるかをテーブルで協議の結果、「阿波踊り」をやろう、ということになりました。写真がないのが残念ですが(※7)とりあえずテーブルにあったナプキンを頬かむりし、男性は全員中腰の体勢をとり女性(※8)は立ち姿前かがみになり、ロンジーをまいた福原君を先頭に芋虫状に一直線でステージを数回うねった後、フロアに降りテーブルの間をうね歩いたのちステージに上がる、というパフォーマンスを披露、気が付けば列の後部に数名の外人たちが連なっていました。同じかっこうをして。そして〆はステージ上で横並びになり、2020「お・も・て・な・し」を滝川クリステル流にパフォーマンス、きめました。

学会を総括すると、脊髄損傷(※9)は外傷性非外傷性を問わず諸外国の関心事で、患者予後は家族も含めた人生をも巻き込むことより、いかにして治療成績を向上させるかに皆で知恵を出し合って解決しようという気運をたかめたこと、および脊髄損傷は下枝の動きが不自由という機能的障害のみならず、損傷からくる痛みのコントロールや、精神的抑うつ、気分障害といった精神科的アプローチ、そしてリハビリテーションの実践といった包括的な医療の介入が重要である、などのコンセンサスを確認して終了いたしました。


(2)ヤンゴン総合病院リハビリ研修
埼玉医科大学国際医療センターおよび飯能靖和病院リハビリスタッフによるヤンゴン総合病院のリハビリ病棟での研修を11/9おこないました。


以前紹介しましたが、この病棟は今回の学会会長であるKhin Myo Hla教授が主催するリハビリ科の管理下にあり、入院・外来患者のリハビリ、除痛、機能障害に対するサポートなどを行ってますが、ミ国ではリハ科の医師は女性が多いのが特徴で(ちなみに現在埼玉医科大学国際医療センターに短期留学中のリハ医も3人女性です)、きめの細かい指示・介入が女性ならではといった点があるのかもしれません。

(3)マンダレー視察
11/11事務方代表で本プロジェクトの起案の段階から深くかかわっている加川さんを中心に日帰りでマンダレー医科大学を視察、12月4日に開催される、Japan-Myanmar Rehabilitation Medicine Forum


の会場設営などに関する下見を行いました。本フォーラムは機器展示やハンズオンセミナーなども併催し両国間のリハビリの向上などにつき互いに研鑽を積もうという趣旨並びに、本事業をミ国トップの保健スポーツ省大臣(※10)にも


ご臨席いただき、後押ししていただくといった目的で執り行われる予定です。

以上第4報をお伝えいたしました。

関係スタッフ一同風邪などひいている暇はありません。フルスロットルで業務を遂行してまいります。
皆様のご協力に改めて感謝申し上げる次第です

脚注
(※1) Asian Spinal Cord Injury Networkの略で17年前より主にアジア太平洋の国々の脊髄損傷にかかわる医師・コメディカルを中心に学術交流を深める。来年度はマレーシアで行われる
(※2) Japan-Myanmar Rehabilitation Medicine Forumのこと
(※3) 自動車メーカーのTOYOTAが藤田保健衛生大学の斉藤栄一教授と共同開発した主に脳卒中後遺症重症例に対する歩行のリハビリを行うロボット支援装置。埼玉県では弊院のみが導入している
(※4) 一般的に、研究計画を立てた際に、将来的に汎用性があるかなどを演繹していく場合最初の数例での成果を基にすることが多い。そうした最初の数例の研究。この場合は、WelWalkの有用性を知る目的での実践を言う
(※5) 一般に学会発表では、意見のやり取りがヒートアップしたり多数の聴衆がもっと詳しく聞きたい、などで制限時間内に完結せず、終わって演壇を降りてからのディスカッションをフロアで行うことがままある
(※6) 映画マンマミーアの挿入歌でもあるが、もとは1976年8月にスエーデンのコーラスグループABBAがリリースした
(※7) 全員が踊ってしまったので、撮影している人がいなかった。撮影したと思われる外人たちに写真送ってもらうよう交渉中
(※8) 今回日本人で学会に参加した女性は弊院の藤木師長…紅一点
(※9) 従来治療が困難で解決すべき点は多々あり。このたびiPS細胞を使用した再生医療による治療が行われることに
(※10) 現在ミ国の保健スポーツ省大臣はDr.Myint Htwe氏